寄贈靴
2020年 07月 11日
日々、店頭でお客様と靴の話をしていると、稀に、今後の靴作りの参考にと靴を寄贈して頂くことがあるんです。
こんにちは、銀座ヨシノヤ銀座六丁目本店 宮崎です。
今日は、そうしたお客様から寄贈された靴をご紹介します。
特徴は、
1 裏無し(アンライニング)であること
2 モカのライトアングルステッチ
3 アッパーが柔らかいのに底付けはグッドイヤーウェルテッド
掬い縫いはマシンで出し縫いがハンド。九分仕立てと縫いが逆なんです。
弊社の商品本部長に面白い靴が寄贈されましたから見に来ませんか!と連絡したら、さっそく来店。
こんな面白い靴なんですと特徴の詳細を伝えていましたが、靴を見る前から「ハーロウだろ!俺それ持ってるよ2足!」
現物を見る前から!!
この推察と知識量はさすが。
所有の2足は、1足がワイルドスミスネームでもう1足はベルトラミネームとのこと。
なかでも、このワイルドスミスネームのハーロウという靴は、諸説あるローファーの起源の一つに関係深いモデルで、当時、ビスポークメゾンとして英国王室御用達だったワイルドスミスに、英国王ジョージ6世が狩猟時の休憩靴としてオーダーしたものが、その後、エドワードグリーン製の既製靴ハーロウとしてワイルドスミスの店頭に並び、それが今日に続くローファーの原型になった、のだとか。
ローファーの起源については、他方で、アメリカで靴づくりを学んだ、ノルウェーの靴職人が当地のモカシン風の靴を参考にして作ったものを、乳牛業者が搾乳待機場所(loafing area)での作業靴として使用しており、これをアメリカの雑誌が紹介したことから、ローファーとして定着したという説と、さらに、『ノルウェーの』という意のノルウェージャンから転じてBASSのWeejunsが派生したとも。
いずれにしても、「昔からグッドイヤーは裏無しがいいんだよ!」と言っていた本部長だけあって、「こういう靴をやりなさいよ!」とリクエストが!! 果たして実現するのか・・・。
「そのローファー、バランスが悪いですね!」と軽口を言ったら、なんとジョンロブ・ロンドンのローファーでした。
「わざとバランスを外して作っているんだよ!」
「粋と野暮の違いってわかるか!」
「完璧すぎない方がいいんだよ!」
作りすぎないことで永遠性を表現する日本の美意識にも通じるような、1950年代のイギリスの洒脱の美学。
モノに対する造詣が深い人ならではのコメント。
銀座ヨシノヤのモノ作りは、こういう人々に守られているのです。
オタクな会社ですね!!